低膨張×高放熱!CMC(Cu/Mo/Cuクラッド材)活用提案「防衛・航空機器の放熱材」

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戦闘機は、わずか1分ほどで高度9,000メートルまで駆け上がります。そのあいだに、機体が置かれる環境の温度は約60℃も変わります。

しかも機内のレーダーや電子機器は、その間も自ら発熱し続けています。

この環境で、機器の内部にある金属が伸び縮みしたら、何が起きるのでしょうか。

今回は、防衛・航空宇宙分野で求められる「熱は逃がしたいが、膨らんでほしくない」という相反する要求と、その解のひとつであるCMC(Cu/Mo/Cuクラッド材)についてご紹介します。

 

防衛・航空機器における「急激な温度変化」の課題

1. 戦闘機は、1分で約60℃の温度変化を通過する

F-15は、高度30,000フィート(約9,100m)まで約60秒で上昇します。

また、航空機の設計基準となる国際標準大気では、高度1kmあたり6.5℃ずつ気温が下がっていきます。

この2つを掛け合わせると、9.1km × 6.5℃/km ≒ 59℃

つまり戦闘機は、地上でおよそ+15℃だった環境から、わずか1分で−44℃の環境へ移動していることになります。

そして機器は、この外部環境に耐えるだけではありません。レーダーの送受信モジュールに使われるGaNデバイスのように、機器自身も高い密度で発熱します。

外は急激に冷え、中は熱を持ち続ける。これが、防衛・航空機器の材料が置かれている状況です。

2. 温度が急変すると、金属の「接合部」が壊れる

金属は温度が上がれば伸び、下がれば縮みます。ただ、それ自体は問題ではありません。

本当の問題は、接合された材料どうしで膨張量が違うことです。

電子機器の内部は、異種材料の積層構造になっています。半導体チップがあり、はんだなどの接合材があり、絶縁基板があり、熱を逃がすための放熱板がある。ここで代表的な組み合わせを見てみます。

  • 銅(放熱板):線膨張係数 約17×10⁻⁶/K
  • シリコン(半導体チップ):約2.6×10⁻⁶/K
  • SiC:4〜5×10⁻⁶/K
  • GaN:5.5〜6.0×10⁻⁶/K

つまり銅とのあいだに、3倍から6倍の開きがあります。

温度が100℃変化したとき、銅は1メートルあたり約1.7mm伸びます。一方でチップ側は0.3〜0.6mm程度しか伸びません。両者はしっかり接合されているため、この差はそのまま接合面のひずみになります。

結果として起きるのが、以下の不具合です。

  • はんだ接合部のクラック
  • チップの割れ
  • 基板の反り

離陸と着陸など、急激な高度変化のたびにこの温度変化が繰り返されます。
ひずみが疲労として少しずつ蓄積してしまうため、長期間の運用が前提となる防衛装備にとって、これは見過ごせない劣化要因になります。

3. 「熱は逃がしたい、でも膨らんでほしくない」というジレンマ

では膨張しない材料を使えばいいと考えると、ここで壁にぶつかります。

  • 銅を選ぶ場合:熱伝導率は約400W/(m·K)と、金属の中でもトップクラス。しかし前述のとおり、膨張が大きすぎるという問題があります。
  • モリブデンを選ぶ場合:線膨張係数は約5.2 × 10⁻⁶/K(293〜373K)と、半導体やセラミックに近い値です。ただし熱伝導率は約142W/(m·K)で、銅のおよそ3分の1しかありません。

放熱を取れば膨張が問題になり、膨張を抑えれば熱がこもる。

単一の金属では、この2つを同時に満たせません。

ここに、異なる金属を組み合わせるクラッド材の出番があります。

<補足>なぜインヴァーではなくモリデブンなのか

「低膨張ならインヴァーでもよいのでは」と思われた方もいるかもしれません。

おっしゃるとおりで、インヴァーを芯材とし、両面を銅で挟んだ CIC(Cu/Invar/Cu) も、当社が手がけるクラッド材のひとつです。銅で挟むことで熱を面方向へ広げられるため、低膨張と放熱を両立する材料として、LED基板などで長く使われてきました。

つまりCMCとCICは、優劣で選ぶものではありません。どこに使うかによって、選ぶべき芯材が変わります。

判断の軸になるのは、接合する相手の熱膨張係数です。

インヴァーの線膨張係数は1〜2×10⁻⁶/Kと、金属の中でも際立ってゼロに近い値です。そのため、周囲の部材も熱でほとんど動かないCFRP構体や、精密測定器のフレームのように「何にも合わせず、とにかく寸法を変えたくない」用途で力を発揮します。

一方、今回のテーマである防衛・航空機器の放熱材は、半導体デバイスのすぐ近くで使われます。相手となるのは、シリコン(約2.6×10⁻⁶/K)、SiC(4〜5×10⁻⁶/K)、GaN(5.5〜6.0×10⁻⁶/K)、そしてセラミック基板です。

ここで求められるのは「膨張をゼロに近づけること」ではなく、「相手の膨張に合わせること」です。ゼロに寄せすぎれば、今度は逆向きの差が生まれてしまいます。

モリブデンの線膨張係数は約5.2×10⁻⁶/K。これらの半導体材料やセラミックスに、ちょうど近い値です。さらに芯材そのものの熱伝導率も約142W/(m·K)と高く、板厚方向へ熱を抜く放熱板に適しています。

解決策:CMC(Cu/Mo/Cuクラッド材)による「低膨張・高放熱」の両立

CMCとは?

CMCは、低膨張のモリブデンを芯材とし、その両面を高熱伝導の銅で挟んだ3層のクラッド材です。

CMCクラッド材イメージ画像

CMCの3つの特長

(1) 圧延接合だから、界面が熱を妨げない

圧延接合では、接着剤やろう材を介さず、圧力によって金属同士を原子レベルで直接接合します。界面に余計な層が入らないため、せっかくの熱の通り道を妨げません。

(2) 対称構造だから、反らない

膨張係数の異なる金属を2枚貼り合わせると、温度変化で反ります。これはバイメタルとしてサーモスタットなどに積極的に利用される現象ですが、放熱板には適しません。CMCは銅/モリブデン/銅と対称に構成することで、この反りを打ち消しています。

(3) 表面が銅だから、実装できる

モリブデン単体ではめっきやはんだ付けに難がありますが、銅で覆われていれば通常の実装プロセスに乗せることができます。

特性は「選ぶ」のではなく「設計する」

そしてCMCの本当の強みは、3層の厚み比率を変えることで、特性を連続的に調整できる点にあります。

厚み比率の設計得られる特性適した要求
モリブデンを厚くする熱膨張がより小さくなる寸法安定性を優先したい
銅を厚くする熱伝導がより高くなる放熱を優先したい

既製品の中から「最も近いもの」を選ぶのではなく、接合する相手の材料に合わせて、材料の側を作り込む。相手が決まっている半導体パッケージのような用途では、これが大きな意味を持ちます。

特殊用途にとどまらない、民生産業での量産実績 

CMCは、防衛のためだけの特殊材料ではありません。

分野用途環境
車載パワーデバイスのヒートシンク材エンジンルーム内の厳しい温度環境
LED・光デバイス基板CIC(Cu/Invar/Cu)とともに低膨張クラッド材が長く使われてきた領域

CMCクラッド材は、民生分野で量産実績を持っています。だからこそ、高い信頼性が求められる分野でも安心してご検討いただけます。

まとめ

温度が激しく、そして急激に変わる環境では、「熱を逃がすこと」と「膨らまないこと」を同時に満たす必要があります。

単一の金属では両立できないこの要求に対し、Cu/Mo/Cuの3層クラッド材であるCMCは、比率設計という形で答えを出せる材料です。

「CMCに興味はあるけれど、自社の製品に適用できるか分からない」「銅やモリブデン単体からの置き換えによる放熱性や実装への影響が不安」といった初期段階からのご相談も大歓迎です。

どの厚み比率が最適か決まっていない段階でも構いません。バイメタル・ジャパンが長年培ってきたクラッド材の実績と技術力で、お客様の用途に合わせた最適な材料設計をご提案いたします。ぜひ下記のページからお気軽にお問い合わせください!

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