今回は、複数の金属を圧延して接合させるクラッド材に関して、
近年特に需要が増加している「造船分野」における爆着クラッド材をご紹介いたします。
2025年5月末、各種ニュースソースが、「政府が、国内で縮小が続く造船業の再生に乗り出すことがわかった」と報道しました。
このコラムでは、より省エネで運航できる造船技術に有効な、爆発圧着クラッド材(爆着クラッド材)とその製造技術について詳細にご紹介します。
造船に関わる中で、大型で厚みのある異種金属の接合にお困りの方は、ぜひご一読ください。
造船分野においてクラッド材の利用が進んでいる主な理由は、船舶に不可欠な「耐食性」と「高強度」という異なる特性を高い次元で両立させるためです。
船舶は時に過酷な海洋環境下での運用を強いられるため、その船体には優れた耐食性に加えて、構造的な強度、さらには軽量性も重要な要素として求められます。
クラッド材は、それぞれ異なる特性を持つ金属の長所を組み合わせることが可能なため、これらの厳しい要求に応える材料として造船業界で採用が拡大しています。
具体的にクラッド材とは、特性の異なる複数の金属を圧延技術によって強固に接合(貼り合わせ)した複合材料を指します。
例えば、耐食性に優れるステンレス鋼と、強度があり比較的安価な炭素鋼を組み合わせたクラッド鋼板が、船体の外板などに使用されます。
この技術により、従来の単一の金属材料では達成が難しかった、海水による腐食を効果的に抑制しつつ、船体構造に求められる強度を確実に確保することが可能になるのです。
ここからは、具体的な船舶の船体構造ごとに、求められる条件を説明していきます。
船体上部は、船体の重心を低い位置にするためアルミなど密度の小さい金属が求められます。
船体全体を軽量化することは燃費も良くなり、脱炭素化の流れにも同期します。
船舶に使用される材料に要求される特性を考えた時、船底含む船体の下部は航行中に他の物体との衝突などが考えられ、スチールなどの十分な強度を持つ材料が求められます。
上記のような異種金属で構造体を作る場合、どのような方法で接合するのでしょうか?
通常の方法では下記のような課題に直面します。
この様な場合に有効なのが、爆着クラッド材の利用です。
その利用方法とメリットについてご説明いたします。
上記のイラストでは爆着クラッド材の利用方法を解説しています。
船体の上部のアルミ構造体と下部のスチール構造体の継手として、アルミとスチールの爆着クラッド材を使用します。
アルミ構造体とクラッド材のアルミ面は同種金属のため溶接が可能です。
スチール側も同様です。
特に、爆着の場合、100mm以上の厚いクラッド材も溶接可能となり、また溶接の熱がクラッド接合面まで影響することはないため、接合強度にも影響は及びません。
次に、爆着クラッド材とは何なのかを説明します。
爆着クラッド材とは、爆発圧着によって接合されたクラッド材のことを指します。
爆発圧着技術は、爆発のパワーを利用して高電圧パルスエネルギーを生成し、被覆金属(クラッド材)を特定の速度と衝突角度でベース金属に衝突させ、異なる金属間の拡散接合を実現します。
この接合技術では、圧延接合など他の工法では接合できないような板厚の金属同士を接合可能です。
この接合技術で製造された爆着クラッド材は、船体の他にも、重化学工業の色々な分野で使用されています。
具体的には、下記のような装置・部品に利用されています。
ここまで、主に船舶など通常の圧着技術では接合が難しい条件下での金属接合の対策として、
爆着クラッド材をご紹介してきました。
バイメタルジャパンでは、通常のクラッド材だけでなく爆着クラッド材をご提案することによって、
各種機器・機体の設計時点での課題解決をお手伝いしています。
100社を超える実績と国内外のトップメーカ―との協業によって、お客様の課題に幅広く対応してきました。
金属接合に関して、お悩みがある方はお気軽にご相談ください。